お経のお話 其の八

『仏説阿弥陀経(小経)』について

浄土三部経三つ目のお経は『仏説阿弥陀経』です。略して『小経』とも呼ばれますが、このお経は例えば初盆の際や故人のご命日等、他の二つ(『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』)比べてお勤めする機会が多いので、聞いたことがある方もおられるかもしれません。大変リズム良く読めるようになっていて、三部経の中では一番短い時間(15分~20分程度)で読むことが出来るお経です。

 この『仏説阿弥陀経』に説かれる内容は、前半と後半とで大きく二つに分けられます。今回はまず前半部分についてお話していきたいと思います

 『仏説阿弥陀経』前半部分では特に、阿弥陀様のお浄土である西方極楽浄土という世界の様子について説かれています。まず極楽浄土とはどこにあるのか、それはここより西方の果てしなく先であると教えます。

この言葉を聞くと、つい”地球は丸いからそのうち元の場所に戻ってくるのではないか”とか、”宇宙のどこかにそんな惑星でもあるのか”といった考えを持つ方もおられるかもしれません。しかしここで示される”西”とは、太陽が沈み一日が終わっていく方向であり、それは喩えるなら、私に必ず訪れるいのちの終わりへと向かう方角と味わうことが出来るのです。

 私のいのちはどこへ向かっているのか。自分の頭で考えても決して答えが出ないこの問いに、阿弥陀様が答えて下さいます。阿弥陀様は私のいのちの向かう先は西方極楽浄土であり、仏と成らせていただく身であると示して下さり、その為の全ての準備を整えて下さったのです。

 続いて、お浄土とはどのような世界であるかが描写されていきます。例えばその大地は金色に輝き、青黄赤白と色とりどりに咲き誇る蓮華は、それぞれが自身の色の光を放ちながらも全体に調和しています。また常に心地よい調べ(音楽)が響き、清らかな香りに満ちている等と説かれます。

 このお浄土の様子を私たちの身近なもので表現しているのが本堂であり、またこれを自宅用に縮めたものがお仏壇です。本堂やお仏壇とは、私のいのちの向かう先である西方極楽浄土を視覚的に教えてくれる対象であり、また普段の生活の中で忘れてしまう阿弥陀様のご苦労を気づかせていただく大切な場所です。

 『仏説阿弥陀経』に示されるお浄土の様子は、自身のいのちの行き先も分からないまま生きている私に、いのちの向かう先であり帰っていける世界があるのだと教えて下さるのです。