5月法話

『正信偈(しょうしんげ』

日常のお勤め「正信偈(しょうしんげ)」

 先月より、日常のお勤めとしての「正信偈」についてお話をさせていただくこととなりました。月忌参りやご法事、お寺での法要等、浄土真宗においては最も代表的なお勤めで、京都にあるご本山・西本願寺では毎朝御影堂というお堂にて、一日も休むことなくこの「正信偈」が読まれています。

 このように「正信偈」が普段から読まれるようになったのは、今から500年以上前の室町時代からです。本願寺第8代ご門主・蓮如上人(れんにょ しょうにん)が、本願寺の僧侶も参拝のご門徒の方々も一緒に読めるお勤めとして定められました。それ以前のお勤めは、僧侶だけが声を出して読むことが出来るような難しいのものであったようです。

 そこで蓮如上人が、親鸞聖人のお心であり浄土真宗の教えの要が凝縮されたこの「正信偈」の句に節をつけて、みんなが一緒に歌うかのようにお勤めするようになったのです。

 「正信偈」以外のお経をお勤めする際、節のない棒読みの読み方がほとんどです。その場合は一句ずつか、もしくは最初から最後まで一定の音程で読み続けます。しかし「正信偈」のように一句ずつ節が付くことにより、リズムの良い音として耳で覚えやすく、また一緒に声をそろえやすいのが特徴です。

 もし手元にお経本がある方は開いてみると分かりますが、「正信偈」は、七言(漢字七文字)を一句として、60行(2句で1行と数えます)120句で構成された漢文の詩です。つまり親鸞聖人は全部で漢字840文字の中に、浄土真宗全体の要をまとめて下さったのです。

 その内容は自身の信仰告白にはじまり、お釈迦様が『仏説無量寿経』を通して伝えて下さった阿弥陀様のお心、そして地域や時代を超えてこの教えを伝えて下さった七人の高僧方(七高僧と呼びます)の功績を讃えていかれます。そして最後に、ただこの高僧方の伝え下さった教えを信ずべしと結ばれます。

 毎朝「正信偈」を読みお勤めしていくという事は、親鸞聖人が出遇われ、よろこばれたそのお心を聞かせて頂くとともに、お釈迦様の時代からインド・中国・日本と伝えて下さった方々のご苦労を思わせていただくということです。そして何よりも、そのお心や言葉を通して、阿弥陀様を讃えさせていただくことになるのです。