11月法話

印度西天之論家 中夏日域之高僧 顕大聖興世正意 明如来本誓応機

 前回までは、お釈迦様の言葉である『仏説無量寿経』に依って説かれた“依経段(えきょうだん)”と呼ばれる「正信偈」の前半部分でした。今回からは、そのお釈迦様の教え・お心を正しく伝えて下さったインド・中国・日本の七名の高僧方のお徳を讃えていかれる“依釈段(えしゃくだん)”という段落に入っていきます。

 初めにも書いたように、この「正信偈」は親鸞聖人が阿弥陀様の教え・南無阿弥陀仏のお念仏に出遇えたよろこびのうたです。お釈迦様が『仏説無量寿経』を説いて下さったおかげでお念仏の教えが示されたのですから、まずお釈迦様を讃えていかれたのが前半部分です。そして後半は、その教えが地域や時代を超えてどのように伝わり、今正しく親鸞聖人ご自身に届いて下さったのかという歴史をみていく段であり、それはそのまま、今この私に届いて下さった歴史といえるのです。

その中で登場するのが、“七高僧”と呼ばれる七名の高僧方です。仏教の歴史の中で、有名無名数えきれないほどの人々が、時にその命をかけて教えを学び、後世に伝えて下さいました。それほど多くの方々の中から、親鸞聖人は特にこの七名の方々こそ、お釈迦様の真に説きたかった他力お念仏の教えを正しく伝えて下さったのだと、その功績を讃えられました。親鸞聖人にとっては、今自分がお釈迦様から続くお念仏の教えをよろこぶご縁を結んで下さった、まさに師匠であり、お徳を讃えずにはおれない方々であったのです。

その七高僧の方々のお名前をまずは紹介させていただきます。またその際、お名前の後にそれぞれに決められた敬称も一緒に紹介していきます。「正信偈」に出てくる敬称と若干異なる場合もありますが、浄土真宗本願寺派としては以下に紹介する呼び方を基本の呼び方としています。

まず「正信偈」においては「印度西天之論家」と表現されるインドのお二方です。

 ・第一祖…龍樹 菩薩(りゅうじゅ ぼさつ)

  ・第二祖…天親 菩薩(てんじん ぼさつ)

次に「中夏」つまり中国で活躍された三名です。

  ・第三祖…曇鸞 大師(どんらん だいし)

  ・第四祖…道綽 禅師(どうしゃく ぜんじ)

  ・第五祖…善導 大師(ぜんどう だいし)

最後に「日域」ですから、日本における二名です。

  ・第六祖…源信 和尚(げんしん かしょう)

  ・第七祖…源空 聖人(げんくう しょうにん) ※法然聖人

以上が親鸞聖人の選ばれた七高僧の方々です。「依釈段」ではこの方々の功績を順番に讃えられていきます。ですので、次回からは第一祖・龍樹菩薩についてお話していきたいと思います。